10歳のYouTuberゆたぼんの記事。
私もこのニュースを見てすぐにツイッターでつぶやきました。
この記事が賛否両論、大きな話題を呼んでいるところですが、
そのコメントに対しての声も各方面で見てて気になったことがあるのでブログを書きました。
完全同意。
#不登校は不幸じゃない 元祖不登校YouTuberが10歳のゆたぼんに思うこと。|小幡和輝オフィシャルブログ | 不登校から高校生社長へ https://t.co/UTRXsKDRuG
「義務教育だから行くのが当たり前」というコメントについてです。
日本国憲法で義務教育が規定されているので、学校に行くのが基本という意味であれば、当たり前と言えます。
ただ、この義務が誰に課せられているかというと、親になります。
親は、この子を学校に通学させる義務があります。
この子が自分の意思で行かないというのであれば、義務教育の違反はありません。
したがって、義務教育だからと言って、この子を非難するのは間違いです。
目次(押すと知りたい情報に飛びます)
1.義務教育(就学義務)
日本国憲法と学校教育法により定まっています。
日本国憲法26条(教育を受ける権利と受けさせる義務)
1 すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じてひとしく教育を受ける権利を有する。
2 すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は、これを無償とする。
※ここでいう法律の定めるところによりの「法律」は、「教育基本法」「学校教育法」「社会教育法」などをいいます。
この憲法に基づく教育を、義務教育と呼称し、
保護者は学齢期などの子を小中学校に通学するように取り計らう義務があり、これを就学義務(就学させる義務)と言います。
「日本国憲法」26条の第2項をうけて、「学校教育法」では次のように定めています。
学校教育法16条(普通教育の義務)
保護者は、次条に定めるところにより、子に9年の普通教育を受けさせる義務を負う。
学校教育法17条(就学義務)
保護者は、この満6歳に達した日の翌日以後における最初の学年の初めから、満12歳に達した日の属する学年の終わりまで、これを小学校又は特別支援学校の小学部に就学させる義務を負う。
2 保護者は、子が小学校又は特別支援学校の小学部の課程を終了した日の翌日以後における最初の学年の初めから、満15歳に達した日の属する学年の終わりまで、これを中学校、中等教育学校の前期課程又は特別支援学校の中学部に就学させる義務を負う。
以上より、就学義務というのは親(保護者)の義務であって、子の義務ではありません。
2.就学義務違反
親が子を学校に行かせない場合、つまり就学義務を履行しない場合どうなるのでしょうか。
学校教育法17条
3 前2項の義務の履行の催促その他これらの義務の履行に関し必要な事項は、政令で定める。
「政令」とは、「学校教育法施行令」のことです。
学校教育法施行令21条(教育委員会の行う出席の督促等)
市町村教育委員会の教育委員会は、前条の通知を受けたときその他当該市町村に住所を有する学齢児童又は学齢生徒の保護者が法(学校教育法のこと)第17条第1項又は第2項に規定する義務を怠っていると認められるときは、その保護者に対して、当該学齢児童又は学齢生徒の出席を督促しなければならない。
※前条の通知:「小中学校では、児童生徒が7日間続けて欠席の場合や出席状況が良好でない場合、保護者に正当な事由がないときは、校長が教育委員会に通知しなければならない。」
教育委員会が保護者に対してこの出席を督促した後、督促を受けても就学させない場合は、「学校教育法」に戻ってみると以下の定めがあります。
学校教育法144条(就学義務違反の罪)
第17条第1項又は第2項の義務の履行の督促を受け、なお履行しないものは、10万円の罰金に処する。
ここで、今回のケースに当てはめてみます。
前もってお断りを入れると、この子の親がどんな意思をお持ちかを知らずに喋ります。
それでは、上記で示した法律による義務教育を踏まえると、2つのパターンが考えられます。
パターン1:親が就学の便宜を図ったのに、子が自らの意思で不登校となった
→親は義務を果たしており処罰されない
パターン2:親が就学の便宜を図らず、子が自らの意思で不登校となった
→親は義務を果たしていないとなれば処罰される=学校教育法により就学義務違反
もう一度言うと、子は教育を受ける権利はあるが、教育を受ける義務ではないのでこの子は法的に問題ありません。
親が就学の便宜を図っていなければ、今回のケースは問題だと言えます。
義務教育という観点で話をすれば以上。
3.教育機会確保法
2016年に成立したという教育機会確保法。
この制定によって憲法と矛盾が出たとは思いません。
従来から、学校教育法、学校教育法施行令があり、その中で正当な理由(不登校などによる通学が困難な場合など)があれば、処罰はされませんでした。
これまでも正当な理由があれば、義務を果たせないことを容認されていたわけです。
しかし、処罰はされないものの、国や行政、親は就学義務があるからといって不登校の子を無理に通学させることが散見されました。
そこで、登校対策を目的としてこの法律が制定されました。
これまでの学校復帰を大前提としていた不登校対策を転換し、学校外での「多様で適切な学習活動」の重要性を指摘しています。
不登校の子を、義務だから何が何でも通学させようとさせて、不登校児童・生徒の無理な通学はかえって状況を悪化させる懸念があるためです。
無理に通学させようとはせず、「休養の必要性」を認め、猶予を許すもの。これを明文化したと言えます。
つまり、この法律のポイントは2つ、「休んでもよい」ということと「学校以外の場の重要性」です。
ただ、この法律ではフリースクールや家庭での学習を義務教育と認めるには至っていません。
実は、当初案は学校以外の学習も義務教育として認めることが盛り込まれていたようですが、そうなると義務教育の転換に飛躍してしまいます。
あくまで、不登校対策の転換がこの法律制定の目的。
学校通学による教育が原則であるけれど、学校に通学できない場合は学習できる機会を充実させようとするものです。
4.教育の目的とは
私は人事部で人材育成をしています。
教育をする上で、この目的や狙いを明確にすることを大事にしています。
研修をする際には、動機付けが研修効果を高めるために、研修目的を必ず伝えます。
義務教育は誰のためにあるのか、何のためにあるのか考えてみれば本質を見失うことはないでしょう。
日本国憲法において、子は教育を受ける権利があり、親などは教育を受けさせる義務があると定まっています。
5.このニュースに対する私の考え
私のツイッターでのつぶやきが以下。
@mainichi @aityandaisyori 選択肢としてあって良いと思うので、否定はしない。ただ、学校教育での学びやその環境下で培われる様々なモノやコト、これらをフォローする重責を“親”が担うわけだ。これは、10歳の意思決定ではない、親の意思決定である。
義務教育という観点では、このブログに記載の通りです。
長々とブログに書いてきましたが、この親が就学義務に対してどうなのかは、私からするとどうでもいい話です。
「義務教育だから行くのが当たり前」という声に対して、法律に照らし合わせてみただけです。
このニュースを見て思ったこと。
それは、ツイッターのつぶやきに全て詰め込んだので、これ以上は語りません。